人間誰しも気分がよくて元気ハツラツな時もあれば、落ち込んで何もする気が起きないこともあるものです。しかしそれが自分や周囲にもわかるほど顕著になり、しばらくしても状態が改善されないとなれば、なんらかの病気が原因ではないかと疑うことになります。専門家を尋ねるほどに症状が重い場合であっても、必ずしもすべての人が「鬱病」と診断されるわけではありません。気分が沈んだり気分が重かったり、憂鬱に感じるという場合を抑鬱症状と呼びます。また何もする気が起きないという場合を、意欲低下と捉えます。そしてこの両方が重なっている時を、鬱状態と呼ぶのです。最近はメンタルヘルスに対する世間の関心の高まりから、鬱病の情報が溢れています。そのためこのような鬱状態を経験すると、真っ先に鬱病と自己診断してしまいがちなのですが、必ずしもそうとは限りません。
この鬱症状を引き起こすものとして、まず体の病気が考えられます。例えば脳腫瘍などの脳の病気がある場合や、甲状腺機能低下症の場合などが考えられます。あるいは体の病気を治すために服用している薬が原因となることもあります。例えばインターフェロンや副腎皮質ステロイドという言葉を聞いたことがあるかもしれません。このように、鬱状態を引き起こす要因が自分自身の外に由来するものである場合の鬱状態を、外因性精神障害と呼びます。
しかし身体的な要因によって引き起こされた鬱状態ではない場合には、統合失調症が疑われます。他にも統合失調症の症状が表れていないか確認して、統合失調症ではないと判断する場合には、内因性鬱病や躁鬱病の可能性があります。これまで好きだった趣味であってもやる気が起きずに興味を失ってしまうなど、興味の喪失や何を食べてもおいしくなくて食欲が出ないなど、食欲が減退し体重が低下しているといった症状がみられるようであれば、内因性鬱病や躁鬱病の鬱状態かもしれません。これら統合失調症や内因性鬱病や躁鬱病は、内因性精神障害と呼ばれています。
以上の場合に当てはまらない時には、神経症の鬱状態が疑われます。神経症の発症には、性格や環境の影響が大きく作用します。そしてその中でも可能性が高いのは抑鬱神経症ですが、不安神経症や心気神経症であっても鬱状態を引き起こす場合があります。これらの神経症による鬱状態は、心因性精神障害と呼ばれています。あるいは近親者の死や突然の環境の変化などが原因で鬱状態が引き起こされている場合などであれば、心因反応と呼ばれています。