人にとって日々のエネルギーを直接口から取り入れる、食事は重要なものです。しかし例えば暑さから食欲が減退して、冷たい水ばかり飲んでいたり、あるいは心配事があって食事ものどを通らないなどということがあるのも事実です。これらは食欲が減退している理由がある程度はっきりしていますし、無理やりにでも何か口にしておかなければ体がもたないと本人にも分かっているため、徐々に改善されて行くのが通常です。しかし極端な仕事上のストレスなどによって食欲不振に陥ると、そうでなくても肉体的にも限界まで疲労が蓄積されているにもかかわらず、それをうまく解消することが出来なくなってしまいます。脳に届けられる筈のエネルギーが届かなくなり上手く物事が捉えられなくなったり、マイナス思考に陥ってしまいがちです。食欲がないという状態が数日続くようであれば、身体的にも危険です。
一口に食欲がないといっても、その裏には様々な病気が潜んでいる場合が考えられます。例えば食道や胃や腸など、直接的に食べ物が通る場所に異常があると、食べる度に違和感が生じて食欲もなくなってしまいます。また肝臓やすい臓などの消化器の病気である場合の他にも、腎臓や心臓や呼吸器系の病気の場合にも食欲に影響します。更に脳血管障害といった脳や神経系の病気の場合もあれば、ホルモンバランスの異常である甲状腺機能低下症などといった病気もあり、また膠原病や糖尿病の場合もありますし、あるいは結核や肺炎のような感染症や悪性腫瘍などの体のありとあらゆる箇所の異常が引き金となって食欲不振を招くことがあります。またそもそも病気そのものが原因というわけではなくても、その治療や服薬によって食欲がなくなるということもあります。心配な場合には、かかりつけの医師に薬や治療の副作用を確認すると良いでしょう。
しかし、このような明確な理由がない場合であって食欲の減退により体重が減ってしまう場合には、精神的な原因が考えられます。例えばうつ病や心身症です。心身症とは精神的ストレスに長期間に渡って晒されていたり、解決のつかない問題に悩んで葛藤したりといった状況が続くことで、身体的に様々な症状を呈するようになる心の病です。またアルコール依存症や薬物依存などによって食べる意欲を失っているかもしれませんし、統合失調症や認知症なども疑われます。ここで思春期の女性を中心に広がる摂食障害も食にまつわる心の病ですが、痩せたいという願望から極端なダイエットを始めたことがきっかけになることが多く、拒食症であれば栄養失調になって死に至る場合もあるほど危険なものです。